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働き方改革シリーズコラム(第3回)

 

1.はじめに

 

 今回のシリーズコラムでは,企業に特に影響が大きい働き方改革関連法の改正点を解説するとともに,対応ポイントをご説明します。最終回(第3回)は,いわゆる同一労働同一賃金(雇用形態に関わらない公正な待遇の確保)についてです。

 

 

 

2.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

 

(1)改正内容

 

 マスコミ等で大きく取り上げられているとおり,今回の改正では,正規労働者と非正規労働者の格差是正が図られました。主な改正内容は次のとおりです。

 

①均衡待遇の原則

 まず,正規労働者と非正規労働者との間に不合理な待遇差を設けることが禁じられました。具体的には,基本給,賞与その他の待遇のそれぞれについて,ⅰ業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度,ⅱそれらの職務の内容・配置の変更の範囲,ⅲその他の事情などを考慮して,不合理と認められる相違を設けてはならないとされました(厳密には,短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条をご参照ください)。

 

 ここで注意していただきたいことは,正規労働者と非正規労働者との間の一切の待遇差が許されない訳ではないということです。この意味では,マスコミにおいて使われる「同一労働同一賃金」との用語はやや誤解を招く表現といえるでしょう。ただし,待遇差については,後述のとおり「不合理ではない」と説明できるようにしておく必要はあります。

 

②均等待遇の原則

 次に,ⅰ業務内容や責任の程度が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者であって,ⅱ将来的にも,業務内容や責任の程度,配置が通常の労働者と同一の範囲で変更されることが見込まれる場合,基本給,賞与その他の待遇のそれぞれについて,差別的取扱いをしてはならないとされました(厳密には,同法9条をご参照ください)。

 

 こちらは,全く同じ業務内容や責任の程度である場合の差別的取扱いを禁ずるものであり,いわゆる「同一労働同一賃金」との用語に近い意味合いです。もっとも,この場合も「差別的取扱い」が禁じられるのであり,一切の待遇差が許されないという訳ではありません。

 

③説明義務の強化・拡充

 パート・有期雇用労働者を雇い入れたときは,速やかに,均衡・均等待遇の確保,賃金の決定方法,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用,正社員転換等の事項について,実施している措置の内容を説明しなければなりません(同法14条1項)。

 

 また,パート・有期雇用労働者から申出があった場合,正規労働者との待遇差の内容やその理由,待遇決定にあたって考慮した事項を説明しなければなりません(同法14条2項)。そして,このような申出を行った労働者に対して,解雇その他の不利益な取扱いを行うことも明文で禁じられました(同法14条3項)。

 

④紛争解決手段の追加

 不合理な待遇差であるか否かの紛争については,これまでは裁判による解決が中心でした。しかし,裁判は労働者・使用者ともに負担が大きいため,今回の改正では,均衡待遇紛争についても,行政ADRとしての調停が利用できることになりました(同法22条,24条)。

 

 かかる制度は,労働者側の紛争解決手段を増やすものであり,労働組合等により積極的に利用される可能性があるとの指摘がなされています。

 

(2)対応ポイント

 

 上記改正に対しては,次のように対応することが考えられます。

 

①現状の把握

 はじめに,各企業において,労働者がどのような雇用形態で働いているか(正社員,パート,有期雇用社員,派遣など),具体的な職務内容や配置の変更の有無等はどのようになっているか,それぞれの労働者に適用される就業規則や給与規程等は何かを確認します。また,正規労働者と非正規労働者とで相違のある賃金項目や手当等が存在すれば,それらをピックアップします。

 

②不合理な待遇差又は差別的取扱いに該当するかの判断

 続いて,ピックアップされた賃金項目や手当等について,その趣旨・性質等がどのようなものかを検討し,具体的な職務内容や配置の変更の有無等から,「不合理な待遇差又は差別的な取扱い」に該当しないといえるかを判断します。この点については,改正前の労働契約法20条に関する裁判例が参考になるため,以下に主要な裁判例をごく簡単にご紹介します。

 

【定年後に継続雇用された有期雇用労働者の基本給】

(最判H30.6.1:長澤運輸事件)

 

有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは,「その他の事情」として考慮される。無期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給する一方で,定年退職後に再雇用された有期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件の相違は,不合理と認められるものに当たらない。

【アルバイトへの賞与】

(大阪高判H31.2.15)

 

有期雇用である契約職員の80%も賞与を受給していることなどからすると,アルバイト職員に賞与を全く支給しないことは「合理的な理由を見出すことが困難であり,不合理というしかない」。そのうえで,賞与には使用者の経営判断を尊重すべき面があることも否定しがたいこと,また実際の職務も能力にも相当の相違があったことなどから,アルバイト職員が受給すべき賞与の額は60%を下回る場合に不合理な相違に至るものというべきである。

【各種手当】

(最判H30.6.1:ハマキョウレックス事件)

 

①住宅手当・・・区別○

②皆勤手当・・・区別×

③無事故手当・・区別×

④作業手当・・・区別×

⑤給食手当・・・区別×

⑥通勤手当・・・区別×

 

※本判例は,以前のコラムで取り上げたことから,結論のみを記載しています。

      (→掲載ページはこちら)

【退職金】

(東京高判H31.2.20)

 

契約社員が10 年前後の長期間にわたって勤続していること,契約社員の中には職務限定社員に名称変更されて退職金制度も適用されている者がいることなどから,「少なくとも長年の勤務に対する功労報償の性格を有する部分に係る退職金(退職金の複合的な性格を考慮しても,正社員と同一の基準に基づいて算定した額の少なくとも4分の1はこれに相当すると認められる。)すら一切支給しないことについては不合理といわざるを得ない。」と判示し,約 50 万円程度の退職金相当額を損害額として認定。

 

 以上が裁判例ですが,注意していただきたいのは,「アルバイトにも賞与を払わなければならない」といった単純な話ではないということです。前記の裁判例は,あくまでそれぞれの会社における賞与や退職金の趣旨・性質等を考慮したものであり,会社ごとに異なる判断がなされる可能性があります。

 

 そこで,各企業としては,それぞれ自社の基本給や賞与,手当等の趣旨・性質等を見直しておくことが重要でしょう。長澤運輸事件では,会社側が概ね勝訴していますが,会社は弁護士や社労士といった専門家とともに綿密に賃金体系を構築していたことが窺われ,その努力を裁判所も評価しているものと読み取れます。

 

③改善等

 判断した結果,不合理・差別的取扱いといえない場合,現状を維持することになります。もっとも,場合によっては就業規則や給与規程等を改定し,それぞれの賃金項目や手当等の趣旨・性質等を明確化しておくべきでしょう。

 他方,不合理・差別的取扱いと思われる場合,原則としては就業規則等を改定し同等の支給を行うことになります。もっとも,大規模な固定費増加を伴うなど経営自体が危うくなりかねないような場合には,単純に非正規労働者へ正規労働者と同じ額を支給することは難しいでしょう。そのような例外的な場合には,段階を踏んで不合理を是正するといった対応も検討すべきと考えます。

 

 

3.最後に

 

 当事務所では,各社の賃金体系について,ベテランの元裁判官弁護士が裁判所目線で,不合理な待遇差又は差別的取扱いに該当するかの判断等を行うとともに,社労士の先生方と協力し,賃金体系の整備をお手伝いしております。上記改正について,ご不明な点やご心配事がありましたら,お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

※ 今回のコラムについては,厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp)の「働き方改革の実現に向けて」を参考にしております。

また,コラムの内容は,執筆当時の法令・指針等に基づいた内容となっております。

 

  

 ◆その他「労働問題(使用者側)」に関する弁護士コラムは → こちら

 

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