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試用期間と本採用拒否

 

Q. 試用期間中に社員として不適切と判断した。直ちに本採用拒否することに問題はないか。

 

 

 1か月前,当社は新卒の新人を試用期間3か月間という条件で採用しました。

 

 ところが,この新人はまだ1か月しか経っていないにもかかわらず既に5日も遅刻しています。そればかりか,業務上作成する書面の誤字脱字が多いうえ,営業成績もさっぱりで使い物になりません。

 

 ついては,直ちに本採用拒否しようと思うのですが,注意すべき点はあるでしょうか。

 

 

 

A. 本採用拒否も解雇にほかならず,合理的理由等が必要となる。また,基本的には試用期間満了時に判断する必要がある。

 

 

  正社員の採用において,多くの企業では,入社後の一定期間(1か月から6か月の期間が定められることが多い)を試用期間とし,正社員としての適格性を判断する仕組みが設けられています。

 

 試用期間中の労働契約は,解約権付き労働契約と考えられており(最大判昭和48年12月12日参照),試用期間中に業務を遂行する過程で正社員としての資質,性格,能力等を観察・調査し,最終的な採否を決定することになります。

 

 そこで,いわゆる本採用拒否は,上記の留保された解約権の行使であり,通常の解雇と同じく,客観的に合理的かつ社会通念上相当な理由が必要となります(労働契約法第16条)。なお,正社員の普通解雇に比べると,企業側にある程度の裁量が認められますが,労務の提供が行われていない内定取消しよりは厳格に判断されます。

 

 本件について検討すると,「1か月の間に5日遅刻している」,「業務上作成する書面の誤字脱字が多い」ということですので,かかる遅刻や誤字脱字について注意指導していたのかが問題になります。注意指導していたにもかかわらず,遅刻や誤字脱字を繰り返しているということであれば,本採用を拒否する理由の一つとなりえます。もっとも,注意指導したことの記録は残しておくべきです。また,「営業成績もさっぱり」ということですが,新卒の場合,技能や能力は勤務を継続する中で習得することが予定されているといえ,他の新卒新入社員より著しく能力が低いといった事情が必要になります。営業成績に関しても客観的な資料が重要になります。これらの事情を総合的にみて,「客観的に合理的かつ社会通念上相当な理由」が存在するといえる場合,本採用拒否が適法となります。

 

 ただし,注意しなければならないのは,本採用拒否は基本的に試用期間満了時に行う必要があることです。なぜなら,各企業において,正社員としての資質,性格,能力等を観察・調査するために必要な期間として試用期間が設けられている以上,極めて明確に不適格を判断できる場合でない限り,試用期間中は観察・調査を続けることが予定されているからです。東京高判平成21年9月15日等の裁判例でも,試用期間の経過を待たずに行った解雇には,より一層高度の合理性と相当性が求められると判断されていますので,ご注意ください。

 

 

※記事の内容は、作成当時の法令・判例等に基づいた内容です。最新法令・判例等のご確認をお願いいたします。

 

 ◆その他「労働問題(使用者側)」に関する弁護士コラムは → こちら

 

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