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求人票の記載と実際の労働条件の関係

Q. 求人票に記載した初任給見込額は,

       同額の賃金支払を保障したものと言えるか?

  

 昨年,当社は新入社員の採用活動を行い,求人票に,初任給見込額として25万円と記載しました。その結果,当社は今年の4月にAさんを採用したのですが,実際のAさんの初任給は24万5000円とすることになりました。ところが,Aさんが入社して半年経った今,Aさんから月額の差額5000円部分も支払えと要求されています。応じる必要があるのでしょうか。

 

 

A. 原則として,見込額は見込額であり,

      同額の賃金支払を保障したものではない。

 

 職業安定法は,労働者の募集に当たり,業務の内容や賃金,労働時間,その他の労働条件を明示しなければならないと定めています(職安5条の3第1項)。もっとも,賃金については,労働者の経験や資格,使用者の業績等で変動しうることから,募集段階では,現行の実績給与・賞与の明示や初任給見込額などの明示に留められ,実際の契約時に確定された賃金が求人票等に記載された見込賃金額を下回るということも見受けられます。

 

 この点,法的には,求人票や募集広告は,労働者からの契約の申込みを誘引するものにすぎず,その後,実際に契約する段階になって決定された内容が労働契約の内容となるのが原則です。ただし,契約時の状況次第では,求人票や募集広告に記載された条件での契約成立が認められることがあります。また,信義則上の説明義務違反が認められることがあることにも注意が必要です。

 

 具体的には,求人票に「常用」と記載されていた事例で,採用時に雇用期間を明示的に定めなかったことから,無期雇用であると判断された裁判例(大阪高判平成2年3月8日)や求人広告において「新卒者と同等の給与を支給する」と記載されていた事例で,これと異なる取扱いをしたことが信義則に反するとされた裁判例(東京高判平成12年4月19日)が存在します。

 

 そこで,企業としては,求人票や求人広告と異なる内容で労働契約を締結する場合,変更されている条件や変更された理由を応募者に十分説明したうえで,実際の労働条件について労働契約書を交わすなど,合意を書面として残しておくことが重要になります。

 

 本件でも,求人票に記載された初任給見込額はあくまで見込額であり,求人票に記載された初任給見込額25万円と実際の初任給額24万5000円の差額については,支払う必要はないのが原則です。もっとも,十分な説明がなされていなかった場合や賃金を24万5000円とする旨の契約書等が存在しない場合には,差額の支払いが必要になる可能性があります。

 

※記事の内容は、作成当時の法令・判例等に基づいた内容です。最新法令・判例等のご確認をお願いいたします。

 

 ◆その他「労働問題(使用者側)」に関する弁護士コラムは → こちら

 

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