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借家人が勝手に敷地を使用した場合

Q. 借家人が勝手に敷地を使用。これは賃貸借契約違反ではないか?  

 

 私が父から相続した土地には、私達家族が住む建物の他に、もう1軒、建物があります。その建物は、もう数十年前に、父が知り合いのAさんに賃貸しています。父は先日亡くなり、またAさんも既に亡くなっていて、今、その建物にはAさんの息子さんであるBさんの家族が住んでいます。古い話ということもあり、賃貸契約書は残っておらず、そもそも父とAさんとが契約書を交わしたのかどうかも、私には分かりません。

 

 先日、Bさんが、自分が住んでいる建物の裏手にある敷地に、物置小屋を置いたり、家庭菜園を作ったりし始めました。私に事前の相談は一切なかったので、私は、後で気がついたという状況です。もともと父がAさんに貸していたのは建物だけであって、敷地まで無制限に貸していた訳ではありません。それなのに、私の土地に勝手に物置小屋を建てたり、家庭菜園を作ったりしていることに、大変腹が立っています。Bさんの行為は、建物賃貸借契約に違反するのではないですか?

A. 建物賃借人の敷地利用権の範囲を逸脱しているといえるか否かが判断基準。

 

 建物の賃貸借契約の場合、借主が貸主から借りているのは建物であって、建物が建っている敷地それ自体は、賃貸借契約の本来的な対象にはなっていません。とはいえ、「住宅に使用するための家屋の賃貸借契約において、その家屋に居住し、これを使用するため必要な限度でその敷地の通常の方法による使用が随伴することは当然であって、この場合その敷地の占有使用につきことさらに賃貸人の同意を得る必要はない」(東京高裁昭和34年4月23日)と考えられています。

 

 例えば、公道から建物に出入りするための通路にあたる部分の敷地については、これを利用できないとなると、借りている建物に出入りすらできないことになるので、通路にあたる部分の敷地を通路として使用することは、建物の賃貸借契約の内容に当然、含まれているといえるでしょう。

 

 もっとも、通路として使用する場合のように、分かりやすいです事例ばかりではありません。様々なケースにおいて、具体的にどのように考えればよいのでしょうか。この点、建物賃借人が敷地を無断使用した場合の判例の傾向では、主として使用形態や賃借建物に及ぼす影響の大小を考慮して判断されていて、敷地の使用範囲が狭く、賃借建物を毀損することもなく、撤去も容易であるような場合には、一般的に建物賃借人が有する敷地利用権の範囲を逸脱するものではないと判断されています(最高裁昭和36年7月21日、最高裁昭和46年7月1日など)。

 

 本事例について考えてみますと、問題となっている家庭菜園の広さや賃借建物への影響の有無等が主に問題となるでしょう。広さが小さく、かつ、賃借建物への影響がない場合には、建物賃借人が有する敷地利用権の範囲を逸脱するものではないと判断されると思われます。他方、物置小屋については、その規模や構造などが主に問題となるでしょう。大規模なもので、構造的に基礎工事が必要なものである場合には、建物賃借人が有する敷地利用権の範囲を逸脱するものと判断されると思われます。

 

 借りている建物を使用する上で通常必要と考えられる合理的な範囲といえる敷地の利用と言えるか否かは、契約当事者の意識や時代背景によっても異なるでしょうから、一概にこれとは言い難くなります。ですから、建物賃貸借契約をする際に、敷地のどの範囲でどのような用途であれば使用可能なのかを、できる限り契約の中で明示しておいた方が良いでしょう。契約書に明記されていれば、それが判断基準になり、後のちの紛争発生を未然に防いだり、発生した紛争の解決基準になったりします。

 

 本事例でも具体的な状況次第ですが、Bさんの敷地利用の範囲・内容・程度が、建物賃借人が有する敷地利用権の範囲を逸脱したと言えない場合、Bさんが敷地を無断使用したというだけでは、建物賃貸借契約に違反したとは言えないということになります。契約書がないという状況ということなので、これを契機に、Bさんとの間で改めて契約書を作成して、その中で、敷地利用権の範囲・内容・程度を具体的に定めるようにされることをお勧めします。

 

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

 

 ◆その他「不動産(事業者側)」に関する弁護士コラムは → こちら

 

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