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社用車で従業員が起こした自損事故の修理費について

Q. 社用車で従業員が起こした自損事故の修理費を請求できるか?  

 

 従業員が仕事中に自社の車で単独事故を起こし、車の修理費が40万円かかります。その車は車両保険の加入がないため、保険は使えません。従業員には修理費の半分の20万円は弁償してくださいと説明しました。

 

 その後,その従業員は会社を退社したのですが,退社するまでの給料を支払っていません。従業員は給料を今まで通りに振り込みで支払ってくださいと言っています。

 

 従業員に車の修理費を払ってもらうこと,給料から修理費を差し引くことなどはできるのでしょうか。


A. 事情によっては請求できるが全額の請求は難しい。

 

 1. 車の修理費を誰がどれだけ負担しなければならないかについて

 

 従業員が交通事故などを起こして損害を生じさせた場合,当該従業員が損害賠償責任を負うのはもちろんですが(民法709条),その事故が「事業の執行について」発生した場合(典型的には勤務中の交通事故),会社も損害賠償責任を負います(民法715条。使用者責任)。このように会社も責任を負うとされているのは,会社は従業員を使用することにより利益を上げているのであるから,従業員を使用することによるリスクも負担すべきであるという考え方によるものです。

 

 そして,会社が損害賠償を行った場合には,従業員に対して求償することができます(民法715条3項)。求償とは,会社の負担部分を超えて支払った場合にその超えた部分の支払いを従業員に請求できるということです。もっとも,会社が支払った賠償額全額の求償ができるわけではなく,信義則上相当と認められる限度においてのみ求償が認められます(判例)。「信義則上相当と認められる限度」は,従業員側の過失と会社の過失(社用車の整備不良の有無・従業員に過酷な労働を行わせていたかどうかなど)を比較衡量して従業員側の過失が特に大きければ求償が認められる可能性があります。

 

 ただし,求償が認められる場合であっても,裁判例では賠償額の数%~20%程度しか認められていないものが多いため,修理費の半分の20万円を従業員に負担させることは難しいでしょう。

 

2. 従業員の給料から修理費を差し引くことができるか

 

 給料については,全額払いが原則となっており(労働基準法24条1項本文),差し引くことも原則としてできないとされています。したがって,修理費を給料から天引きすることはできません。もっとも,修理費を給料から差し引くことについて従業員の同意が得られれば天引きすることが可能です。

 

3. 今後の対応について

 

 従業員が会社に対して修理費の一部を支払うか,支払うとしていくら支払うか,給料と修理費を差し引くかどうかについて従業員と交渉し,合意書面を作成すべきでしょう。この際,合意しないと給料は支払わないなどの対応をすると,パワハラを理由として会社が損害賠償責任を負う可能性もありますので注意が必要です。

 

 給料の未払いが続けばそれだけ遅延損害金(年14.6%。賃金の支払いの確保等に関する法律第6条1項)が増えていくため,上記の点に合意することが難しいようであれば,給料は先に支払っておくべきでしょう。

 

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

 

 ◆その他「労働問題(使用者側)」に関する弁護士コラムは → こちら

 

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