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期間の定めなく貸した土地の返還について

Q. 約55年前に期限を定めずに貸した土地を返してもらうことはできますか?  

 

 私(=X)の父(=A)は、生前、昔なじみのBさんに土地を貸していて、Bさんはその土地の上にコンクリート造りの建物を建てて住んでいました。

 父が亡くなった後、その土地は私が相続しています。一方、Bさんも既に亡くなり、Bさんの息子さんであるYさんが建物にお住まいです。

 

 父がBさんに貸したのは今から約55年も前です。契約書などの書面は何も作成しておらず、地代以外には特段の取り決めはしていなかったようです。

 私としては、Bさんの息子さんであるYさんとは特に縁はないですし、今のまま非常に安い地代で貸し続けるよりは、新しく建物を建て、自分で住むなり、人に貸すなりして、有効活用したいと思っています。

 

 そこで先日、Yさんに話をして、契約を解消して土地を返してくれないか話をしてみました。しかしYさんは、「決められた地代を毎月ちゃんと支払っているし、この土地に長年住み慣れているから、この土地を離れたくない」と言われて、土地の返還に応じてくれませんでした。

 

 なんとか土地を返してもらうことは、できるのでしょうか?

A. 存続期間の満了後に正当事由ある更新拒絶等をすれば土地の返還を実現可。

 

 土地を返してもらうためには、まずは土地の賃貸借契約を終了させなければなりません。賃貸借契約が存続する限り、借主は借りている土地を返す必要がないからです。

 

 賃貸借契約を終了させる方法は、大きく分けて①合意解約、②債務不履行解除、③期間満了による契約終了の3つがあります。もっとも、本事例では、Yさんは話し合いに応じてくれなかったので①合意解約はできませんでしたし、また、Yさんは地代も毎月ちゃんと支払っているということで②債務不履行解除もできません。そこで、③期間満了による契約終了を目指すことになります。

 

 では期間満了はいつになるのでしょうか。期間の定めをせずに土地を貸した場合、契約の存続期間は法律で定められます。平成4年8月1日以後であれば新しい法律である借地借家法が適用されますが、Xさんのお父さんであるAさんがBさんに土地を貸したのは約55年前とのことであり、平成4年8月1日より前になるので、古い法律である借地法が適用されます。借地法によれば、期間の定めなしになされた土地賃貸借契約であって本件のように堅固な建物(例:コンクリート造りの建物)がある場合、契約の存続期間は60年となります。土地を貸したのが約55年前ということなので、あと5年で契約の存続期間満了を迎えることになります。

 

 では、契約の存続期間が満了すれば、直ちに契約は終了するのでしょうか? 借地法は借主保護を趣旨とする法律であるため、期間が満了しただけでは契約が終了しません。まず①貸主から借主に対して契約の更新をしない旨の通知(更新拒絶)をし、それでも借主が土地を返還しなかった場合は②貸主から借主に対して遅滞なく異議を述べる必要があります。そして、①更新拒絶と②遅滞なき異議のいずれにも正当事由が必要とされています。正当事由がない場合、賃貸借契約は法律の定めにしたがって更新されたものとみなされてしまいます(法定更新)。

 

 では、どのような場合に正当事由があると判断されるのでしょうか。この点、①貸主および借主が土地の使用を必要とする事情、②借地に関する従前の経緯、③借地の利用状況、④貸主からの財産上の給付等(いわゆる「立ち退き料」)の有無・内容などを総合的に考慮して、正当事由の有無が判断されるとされています。メインの判断要素となるのは①貸主および借主が土地の使用を必要とする事情であり、④貸主からの財産上の給付等(いわゆる「立ち退き料」)の有無・内容などは補完的要素とされています。

 

 本事例で、貸主であるXさんが土地の使用を必要とする事情は「土地を有効活用したい」というものです。従来の裁判例では、こうした理由では正当事由が認められ難い傾向がありましたが、最近は裁判所も、土地の高度利用を主たる理由としても正当事由を認める傾向に変わってきています。もっとも、その場合であっても貸主から相応の立ち退き料を支払うことで正当事由を補完することが必要になります。

 

 ですから、Xさんとしては、5年後に迎える存続期間の満了に際して、Yさんに対して更新拒絶を通知し、Yさんが土地を返さない場合には遅滞なき異議を述べる必要があります。また、その更新拒絶と遅滞なき異議のどちらにも正当事由が備わっていることが必要になります。より具体的には相応の額の立ち退き料の提示があるかどうかが問題になるでしょう。もしYさんがあくまでも争う場合には、Xさんとしては裁判所に訴訟提起して、正当事由の有無等を判断してもらうことになります。このように流れは複雑で大変ですが、しっかりと手順を踏めば、Xさんは土地を返してもらうことを実現可能です。

 

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

 

 ◆その他「不動産(事業者側)」に関する弁護士コラムは → こちら

 

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