遺産に含まれる不動産から生じる賃料収入は誰が取得するのか?


Q. 遺産分割までに発生した賃料は誰が取得することになるのか?

先日、私の父が亡くなりました。父は個人でXビルを所有して賃貸事業を営んでいました。父の遺産は不動産だけでも多くあったことから、私(次男)を含めた父の子供3人(長男、次男、三男)での遺産分割の話し合いが長引いてしまいました。結局、Xビルは長男が取得することになったのですが、長男は「父が死んだ時点から今までのXビルの賃料収入は全て自分のものだ」と主張しています。法律的にはどうなのでしょうか?

A. 原則として、賃料収入は共同相続人間で分割取得される。

民法では、相続人が複数いる共同相続の場合、いわゆる遺産は、相続開始時から共同相続人による共有になるものと定めています(民法898条)。そして、その相続共有という状態を解消するために遺産分割を行うことになり、遺産分割が行われると、その効力は相続開始時に遡って生じることになっています(民法909条本文)。

 本件でいえば、お父様がお亡くなりになった時点(=相続開始時)からXビルはご兄弟3人の共有状態になりますが、遺産分割で長男さんがXビルを取得すると決まったのであれば、Xビルは相続開始時に遡って長男さんの所有物であったことになります。

 そうだとすれば、相続開始時からのXビルの賃料収入も当然に長男さんのものになるとも思えます。実際、同様のケースが争われた裁判において、地方裁判所と高等裁判所は、そのように判断しました(大阪地方裁判所平成15年9月26日判決、大阪高等裁判所平成16年4月9日判決)。

 ところが最高裁判所は「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである」と判断しました(最高裁判所平成17年9月8日判決)。

 つまり、本件にそくして言えば、遺産分割によってXビルは相続開始時に遡って長男さんの所有物になりますが、相続開始時から今までの間に既に発生していた賃料収入については、ご兄弟3人に3分の1ずつ確定的に分割取得されていることになり、遺産分割によってXビルを長男さんが取得したことによる影響は受けない、ということです。

 ですから、この最高裁判所の判例によって、長男さんの主張は当然には認められないことになります。

 このように、相続開始時から遺産分割までのXビルの賃料収入は、本来的には遺産分割の対象にはならず、共同相続人に分割取得されるのですが、遺産分割協議の際に、共同相続人が同意すれば、話し合いの対象に含めることはできます。その場合、賃料収入は合意された内容にしたがって処理されることになります。

 そこで、本件においても、もしご兄弟3人の間で、Xビルの賃料収入を長男さんが取得するという合意が成立するのであれば、長男さんがXビルの賃料収入を取得できることになります。

※記事の内容は、作成当時の法令・判例等に基づいた内容です。最新法令・判例等のご確認をお願いいたします。

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