採用内定取消しの適法性


Q. 内定取消しを行いたいが,どのような点に注意すべきか?

 当社では,毎年新卒の学生を数名採用しています。今年度も6名の方に採用内定を出したのですが,そのうちの1名であるAさんの内定を取消したいと考えています。

 というのも,Aさんは,採用内定後の研修会において上司や同僚となる社員に対しタメ口で話すなど社会人として相応しくない言動をとっているほか,提出を求めているレポートを全く提出しないのです。

 Aさんの内定取消しにあたり,注意しておくべきことがあれば教えてください。

A. 内定取消しに社会通念上相当な理由があるかを

確認する必要がある。

 大学卒業見込者の採用は,①企業による募集,②学生の応募,③採用試験・面接,④(内々定)内定,⑤採用という流れで進むのが一般的かと思います。このような流れの場合,企業による募集が申込みの誘引,これに対する学生の応募が労働者による契約の申込み,内定が企業による承諾と考えられ,採用内定の段階で始期付き・解約権留保付きの労働契約が成立したことになります(最判昭54.7.20,最判昭55.5.30)。

 このように採用内定の段階で,一応の労働契約が成立していることになるため,企業が理由なく一方的に内定取消しをすることは許されません。すなわち,内定取消しは解雇(解約権の行使)にほかならず,その解約権行使が適法といえるかが問題となるのです。そして,解約権の行使が適法といえるためには,「解約権留保の趣旨,目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる」ことが必要になります。

 ご相談の事案では,Aさんは研修会において上司や同僚となる社員に対しタメ口で話すなどしているということですが,こういった言動については教育や研修において改善を図るべきと考えられています。そこで,例えば,入社前研修として社会人としてのマナー教育を複数回行い,それでも改善されない場合に内定取消しを行うことが考えられるでしょう。

 また,Aさんがレポートを全く提出しないことについても,これだけの事情で直ちに内定取消しを行うことは避けるべきと考えます。なぜなら,内定は始期付きの労働契約であり,入社日までの研修参加やレポート提出は就労義務とは異なると考えられているからです(東京地判平17.1.28参照)。そもそも入社前に研修やレポート提出のような義務を課す場合,募集や内定の際に十分にその内容を説明し,当該学生の学業等に過度の負担を与えないものか配慮しておく必要があります。

 以上のとおり, Aさんの内定取消しにあたっては,Aさんに改善の機会を与えたかやレポートに関する説明を行ったか等を踏まえ,内定取消しに「社会通念上相当な理由」があるか否かを確認していただく必要があると考えます。

※記事の内容は、作成当時の法令・判例等に基づいた内容です。最新法令・判例等のご確認をお願いいたします。

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