取締役でない者に対する支払いに関する役員の責任


Q. 取締役でない者に対する取締役報酬名目での支払いに関する代表取締役の責任について。

私はある会社の株主ですが,その会社の代表取締役社長が株主総会の決議等を経ないまま取締役でない者に対して取締役報酬の名目で多額の支払いを行っており,その支払いのせいで会社には損害が生じています。

 代表取締役社長に対して責任を追求することができるでしょうか。また,私自身が責任を追求することができますか。

A.会社法423条1項の取締役としての任務懈怠にあたり損害賠償責任を追求することができる。

 取締役の報酬は,定款の規定または株主総会決議によって決めなければならないところ(会社法361条1項),取締役の地位にない者に対して「取締役報酬」名目で金銭を支払うことは,会社法361条1項所定の株主総会の決議の存否にかかわらず,会社に対する任務懈怠(会社法423条1項)に当たり,それにより会社に当該支払金額の損害が生じたことになります(東京地裁平成27年5月26日判決)。

 発行する株式の全部または一部の内容として譲渡制限を設けていない公開会社においては,責任を追求する時点で6ヵ月継続して株式を保有する株主は,会社に対して書面等により役員の責任を追求する訴えの提起を請求することができます(会社法847条1項)。なお,非公開会社においては,6ヵ月継続保有の要件は必要とされず,株主であれば前記の請求をすることが可能です。会社が前記の請求を受けてから60日以内に責任追求等の訴えを提起しない場合は,当該請求をした株主は,会社のために,役員野適任追求の訴えを提起することができます(同条3項)。したがって,まずは,会社に対して代表取締役の責任追及をする訴えの提起を請求し,一定期間内に会社が訴え提起をしない場合は,ご相談者が当該訴えを提起することができます。

 また,前記東京地裁平成27年5月26日判決の事案においては,任務懈怠の対象となる支払いがなされた後に,「(当該支払いがなされた期間の)取締役報酬の年間総額(枠)を1000万円以内とする」,「取締役報酬の配分及び配分の時期・方法は取締役会に一任する」及び「『株主総会の決議を経ずに支払済みの取締役B,被告Y1及び被告Y3に対する取締役報酬の支払全部』を追加承認する」旨の株主総会決議がなされていましたが,それらの決議は,「「取締役」に対する「取締役報酬」の支払を承認するものであって,取締役たる地位になかった期間について「取締役報酬」の名目で金銭を支払う行為を免責するものとは解されない」として,総株主の同意によらなければ,代表取締役の当該任務懈怠に基づく損害賠償責任は免除できないと判断されています。

※記事の内容は、作成当時の法令・判例等に基づいた内容です。最新法令・判例等のご確認をお願いいたします。

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