退職勧奨の適法性


Q. 退職勧奨はどのように行えばよいか?

 私の会社では,半年ほど前に,従業員を1名中途で採用しました。ところが,この従業員は他の社員に比べて業務遂行能力が低いうえ,同僚と上手く意思疎通を図ることができません。私としては,この従業員に退職してもらいたいと考えているのですが,退職勧奨はどのように行えばよいのでしょうか。

A. 社会通念上相当と認められる手段・方法で行うべきである。

 退職勧奨とは,使用者が労働者に対して辞職や労働契約の合意解約の承諾を促すことをいいます。そして,退職勧奨について,裁判所は「使用者は,退職勧奨に際して,当該労働者に対してする説得活動について,そのための手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しない限り,使用者による正当な業務行為としてこれを行い得るもの」としています(東京地判平23.12.28)。そこで,退職勧奨を行うこと自体が違法と評価されることはありません。

 もっとも,退職勧奨はあくまで自発的な退職を促す行為であるため,「労働者の自発的な退職意思を形成する本来の目的実現のために社会通念上相当と認められる限度を超えて,当該労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり,又は,その名誉感情を不当に害するような言辞を用いたりすることによって,その自由な退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動をすることは許されず,そのようなことがされた退職勧奨行為は,もはや,その限度を超えた違法なものとして不法行為を構成する」とされています(前掲裁判例)。

 社会通念上相当と認められる手段・方法であるか否かについては,面談の頻度や時間の長さ,上司の言動などが総合的に考慮されます(大阪高判平13.3.14等)。そこで,1時間以上にわたる長時間の面談を複数回行うべきではないでしょう。また,言動自体も暴言はもちろん,威圧的な言い方も避けるべきです。さらに,労働者が退職勧奨に応じない姿勢を明確に示した場合,以後は退職勧奨を継続するべきではありません。

 なお,いわゆる「追い出し部屋」への配置のように退職せざるをえない環境を作った場合,そのような措置自体が違法と評価される可能性があります。私がご相談を受けた会社の中にも,対人トラブルの多い従業員に業務を全くさせず,事務室内でじっとしていることを命じたうえで退職勧奨を行ったケースがありましたが,そのような場合には別途注意・指導の場を設けるなどの対応をしつつ,退職勧奨すべきと思われます。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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