店舗の賃借人より名義変更を頼まれた:注意すべき点は何か


Q. 事業用賃貸借契約の賃借人名義の変更を依頼された場合の注意点は?

 私は店舗(テナント)用建物のオーナーです。ある店舗を法人に賃貸していまして、その法人の代表者であるYの妻Aが、賃貸借契約の保証人になっています。この度、Yから「賃借人名義の変更」を依頼されました。Yは「店舗の営業は順調なのだが、諸般の事情により、賃借人である法人は解散する。しかし店舗の営業は継続する。そこで賃貸借契約の賃借人名義を、従業員であるZに変更し、私が保証人になる」と言うのです。

 (質問1)私は、このような申し出に応じなければいけないのでしょうか? 

 (質問2)仮に応じるとして、注意する点や問題点などがあれば教えてください。 A. 応じる必要はない。応じるのであればやり方を慎重に判断すべき。

〈質問1に対して〉  賃貸人の側で賃借人名義の変更に応じる法的な義務は本来ありません。

 もっとも、法人が解散した場合でも、賃貸借契約は当然には消滅せず、清算人が賃貸借契約を含め、法人の財産関係の整理を行うことになります。清算手続きが終了した時点で法人は消滅しますので、賃貸借契約がその時点以降も継続することは考えられません。

 そこで、こうしたことを前提に、賃貸人と賃借人とで話し合った上で、賃貸借契約を双方合意の下に解除するというやり方も考えられます。

 〈質問2に対して〉

 仮に「賃借人名義の変更」に応じるのであれば、賃貸人Xとしては、もともとのリスク以上のリスクは負わないようにする方法を考える必要があると思われます。

 ここで回答の便宜上、ご相談者(=賃貸人)をX、法人(=賃借人)を甲法人、法人の代表者をY、Yの妻(=保証人)をA、従業員をZとしてお話します。

 ご相談の「賃借人名義の変更」は、法的には「賃借人たる地位の移転」を行うという形になります。これは賃貸人・旧賃借人・新賃借人の三者が合意することで実現可能です。

 もっとも、Yが提案した「賃貸人たる地位の移転」に応じた場合、賃貸人Xには、従来にない新しいリスクが生じます。というのは、Zは、自分自身が営業(事業活動)をするのではないのでしょうから、Yに対して、同店舗を転貸借することになり、賃貸人Xは、この転貸借を承認することになるでしょう(民法613条1項)。

 ここで、もし、Yが店舗を不適切なやり方で使用した場合であっても、転借人Yは賃貸人Xに対して直接義務を負うことになりますので、賃貸人Xは、賃借人Yに対して、直接、責任追求することはできます(東京地裁平成26年8月26日参照)。

 もっとも、新たな枠組みではYの妻Aが保証人から外れてしまいます。新たな保証人としてYがつくとのことですが、実質的な賃借人がYである以上、事実上、保証人がいない状態になってしまいます。

 このように、Yの提案内容は、保証人が事実上いなくなるという新たなリスクを抱えるものであって、おすすめしません。もし対応するならY自身を新賃借人とし、保証人は引き続きYの妻Aとすべきです。もっとも、Yの提案自体、不自然な感は否めず、そうまでして契約関係を継続すべきか、慎重に考える必要があると思われます。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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