民法の遺留分制度の特例


Q. 会社の事業承継に当たって利用できる制度について

 私は,資本金が1000万円,従業員100人程度の製造業の会社を経営しています。高齢になるにつれ,会社の後継問題が気がかりです。会社の株式は,100%私が所有しています。私には,息子と娘が一人ずついますが,後継者には,会社の社員でもある息子になってほしいと考えており,息子もそれを望んでいます。息子に私の全財産を相続させる旨の遺言書を作成しているのですが,息子を会社の後継者にするに当たって,何か問題となることはありますか。

A. 民法の遺留分制度により株式や事業用資産が分散するおそれがある。遺留分制度の特例により除外合意をしておくべき。

 会社経営者が息子を後継者として事業を承継させようとする場合,後継者となる息子に全ての財産を相続させる旨の遺言書を作成していたとしても,民法の遺留分制度により後継者以外の相続人にも自社株式や事業用資産が分散するおそれがあります。そのため,少なくとも会社の株式や事業用資産については,後継者のみが相続できるようにしておく必要があります。

 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下,「円滑化法」といいます。)では,事業承継を円滑に進めるために政令で定められた対象となる中小企業において民法の遺留分制度に特例を設けています(円滑化法第4条第1項1号)。なお,特例が適用される中小企業は,業種によってその規模等は異なりますが,製造業等の場合,資本金3億円以下または従業員300人以下の会社が対象となりますので,質問者さんの会社は特例の適用対象となる会社です。

 円滑化法における遺留分制度の特例では,後継者が現経営者から贈与や遺贈等により取得した当該会社の株式や事業用財産を遺留分算定の基礎財産に算入せず,遺留分減殺請求の対象としないという後継者と推定相続人の合意(以下,「除外合意」といいます。)をすることが認められています。現行の民法においても,遺留分の事前放棄という制度がありますが,対象財産が事業用の財産等に限定されず後継者以外の相続人に申立てを促すのが困難であること,各推定相続人がそれぞれ家庭裁判所に申立てを行い,許可される必要がある結果,相続人ごとに判断が分かれる恐れがあることから,事業の円滑な承継が困難となる可能性があります。よって,本件においても除外合意をしておくべきでしょう。

 相続の問題は,被相続人の存命中は顕在化せず,死亡した後,往々にして問題となります。被相続人が存命中に取りうる手段は講じておくべきです。

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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