自主再建の場合

 自主再建について、下記の順に説明します。
 

 1. 自主再建(私的整理・任意整理)とは

 2. 自主再建か法的手続か

 3. 自主再建(私的整理・任意整理)の
   代表的な方法

 4. 自主再建(私的整理・任意整理)の
  具体的な進め方



 

 自主再建(私的整理・任意整理)とは、会社再建のための法律上の手続(=裁判所が関与する手続)を利用するのではなく、債権者と債務者とが話し合いを行うことによって、会社再建を目指すやり方を言います。
 

 (1)メリット

 自主再建にかぎらず再建を目指す場合には、事業活動を継続するので、取引先等から「倒産」というレッテルが貼られにくいというメリットがあります。仕入先への買掛金債務の支払も続けるので、再建後の事業継続に支障が少なく、かつ、信用の低下も少なくてすむ等のメリットもあります。
 

 (2)デメリット

 その一方で、自主再建を実現するためには、債権者全員と話し合って、その同意を得ることが必要になります。裁判所が関与しないため、それぞれの債権者からすれば、自分だけ他の債権者よりも不利な条件を飲まされているのではない等、自主再建の進め方について透明性や公平性に疑問を持たれやすく、それが原因で話し合いが進まないことがあるというデメリットがあります。

 
 

 自主再建(私的整理・任意整理)を試みるか、それとも法的手続を利用するかを判断するにあたっては、次の要素を考慮して下さい。

 

 (ア)全債権者に同意を得る見込み

 自主再建(私的整理・任意整理)の場合には、返済期限の繰り延べ(リスケジューリング)などの債権の内容を変更するための話し合いをする際に、その話し合いを求める債権者を誰にするか、債務者の側で任意に決めることができます。例えば、大口債権者とだけ、まず先に話を付けておくということが可能です。もっとも、債権者の権利内容を変更する以上、最終的には、やはり全ての債権者の同意が必要となります。


 これに対して、法的手続の場合には、債権者全員の同意がなくとも、法律の定めによって、債権者が持っている権利の内容を強制的に変更することができます。

 

 (イ)手続の公正さ・透明性

 自主再建(私的整理・任意整理)は裁判所が関与するものではないため、法的手続と比べれば手続が不透明になると言わざるを得ません。たとえば、債務者の財務情報などの必要な情報について債権者に開示されることが保障されていないことなどが、その例です。

 

 また、自主再建(私的整理・任意整理)は、公平中立な第三者たる裁判所が関与するわけではないため、手続の公正さや透明性が担保されるか否かは、個人的な資質や善意に委ねられてしまいます。

 

 (ウ)手続に要する時間と費用

 法的手続を行うには、申立ての準備にも時間がかかる上、裁判所でも相応の時間がかかってしまいます。また、裁判所へ支払う予納金などの費用も高額となります。


 他方、自主再建(私的整理・任意整理)の場合、上手くいけば比較的短期間で話がまとまることが多い上に、費用も低額に抑えることができます。

 

 (エ)企業価値の毀損の可能性

 法的手続を行った場合、手続開始決定の情報が官報に掲載されるため、債務者の資金繰りが不安定になっていることが広く知られてしまい、企業価値が毀損されてしまう可能性があります。


 他方、自主再建(私的整理・任意整理)であれば、官報で公表されるようなことはないので、経営再建中であることが第三者には知られにくいのが特徴です。ですから、自主再建(私的整理・任意整理)であれば企業価値の毀損が最小限に抑えられるという事実上のメリットがあります。

 

 (オ)強制力の有無

 法的手続を利用する場合、全ての債権者に対して一律に個別的な権利行使(債権回収)が禁止されます。つまり、個別的債権回収の禁止について強制力があります。


 それに対して、自主再建(私的整理・任意整理)の場合、債務者は個々の債権者に対して要請を行って債権者に対して自制を求めることになりますが、債権者に対する強制力はありませんので、債権者が個別的債権回収の手段を行ってくることも考えられます。

 

 上記のような考慮要素を総合的に判断して、自主再建(私的整理・任意整理)か、法的手続かを検討することになります。どちらが良いかはケース・バイ・ケースと言わざるを得ません。選択に困られる際には是非、弁護士にご相談下さい。

 
 


 

 (1)債権カット(債務免除)

 現在、債務者が負担している債務の全部又は一部を、債権者が免除することによって、債務者の再建を図る方法です。自主再建(私的整理・任意整理)としては最も効果的な方法ですが、債権者の了解を得るのが難しい方法です。もっとも、債務免除の範囲を限定するなど、条件によっては債権者に応じてもらえる場合もあります。


 (2)リスケジュール

 通常の金銭消費貸借契約においては、「一定の期限までに支払いがない場合には、期限の利益を失い、残金全額を直ちに支払わなければならない」という趣旨の規定(=期限の利益の喪失条項)が置かれております。ですから、分割支払になっている場合であっても、約束された支払期限を過ぎてしまった場合、この規定の定めによって返済猶予が失われ、残債務の全額について、遅延損害金も含めて支払う義務が生じます。


 このような場合に、債務者と債権者とが話し合い、支払いが遅滞している分について期限の利益を回復し、一定の期間内に弁済を行う約束を改めて取り交わすことによって、債務の返済計画を見直すことをしたりします。


 また、支払いの遅滞こそないものの、既に資金繰りに窮している場合に、もともの予定されていた弁済期間を、より長期の弁済期間へと延長することによって、余裕のある資金繰りを実現することも考えられます。


 これら、支払条件を変更することを「リスケジュール」と呼んでいます。債務者の資産や事業がさほど劣化しておらず、負債の額も、そう過剰でない場合に利用される方法です。


 平成25年3月に金融円滑化法が終了したことにより、金融機関は、以前ほど簡単にはリスケジュールに応じてくれなくなっていますが、客観的な事実に基づいて、きちんとした再建計画(事業計画)を提示すれば、金融機関がリスケジュールに応じてくれる場合があります。単に、金融機関に「お願いすれば、待ってくれる」という甘い話ではありませんし、実態を隠して嘘で塗り固めた再建計画を金融機関に見せても、逆に不信感を持たれてしまうだけです。


 (3)事業譲渡・会社分割

 既存の債務について債権カットやリスケジュールを交渉するのではなく、財務状況が悪化している不採算事業部門を企業から切り分けて、これを必要とする他の企業に譲渡する方法もあります。逆に、収益性や将来性の見込まれる事業部門を高値で第三者に譲渡して、そこで得られる譲渡代金を原資として、将来に向けた経営改善の施策を行うという方法もあります。


 このような方法を採る場合、会社法上の事業譲渡や会社分割という手続きを経ることになります。会社法に定める手続きに沿って行う必要がありますが、必ずしも裁判所を介する必要はなく、任意に行うことができます。もっとも、事業譲渡や会社分割に関する法律・制度は極めて複雑なので、これを行う場合には弁護士に相談することをお勧めします。

 

 (4)第二会社方式

 上記の事業譲渡・会社分割の方法を応用するやり方です。事業譲渡や会社分割によって、収益性や将来性の見込まれる事業部門を切り出して第二会社(スポンサー、従業員、親族などによる事業の受け皿)に承継させ、収益の改善を図りつつ、不採算部門は元の会社(旧会社)に残して、破産などによって金融債務にかかる不良債権処理を実施することで、会社の事業の再編・整理・再生を図るという方法です。

 
 


 (1)任意の交渉

 裁判所やその他の機関等を利用せずに、債務者が債権者との間で個別に交渉をする方法です。あくまで法的な枠組みの外で行われる私的な交渉ですので、債権者に対しては何の強制力もありません。ですから、ただ闇雲に交渉に臨んでも、債権者からの了承を得ることはできません。債権者からの了承を取り付けるためには、債権者に提示する再建計画に説得力がある必要があります。
 

 再建計画の立案や債権者との交渉の段階から弁護士が入ることにより、債権者からできる限り好い条件を引き出して了承をえることができる可能性があります。


 (2)特定の機関による各種制度を利用する方法

 自主再建(私的整理・任意整理)を促進するために、様々な制度が用意されています。現在利用可能な制度としては

 

  ①中小企業再生支援協議会による再生計画策定支援制度

  ②整理回収機構による企業再生業務

  ③事業再生実務家協会による特定認証ADR制度

  ④地域経済活性化支援機構の制度

 

などがあります。


 それぞれの制度は主催者が異なるため細かな点には違いがありますが、大まかに言えば、次のような流れで手続きが進められます。


 まず、複数の金融機関から借り入れのある債務者が、金融機関への債務に関する免除や支払猶予(リスケジュール)等を支援内容とする再建計画(事業再生計画)を策定します。そして、これについてメインバンクなどの主要な債権者の同意を得て、金融支援の要請先である債権者に対して共同提案を行い、債権者が行う個別回収や保全強化の「一時停止」を申し入れます。その後、第三者である専門家アドバイザーによる客観的視点からの調査報告を仰ぐことで、債権者における検討と判断に資するようにして、3ヶ月程度の協議期間を経て合意形成をめざす、という流れです。
 

 (3)裁判所による特定調停制度

 裁判所を介すという意味では、純粋な自主再建(私的整理・任意整理)ではありませんが、民事再生手続や会社更生手続とは異なり、手続の開始決定により債権者の個別的権利行使を禁止する効力や、法定多数の同意で可決された再建計画の認可決定により不同意債権者を拘束する効力はありません。むしろ、債務者の弁済計画案について債権者や担保権者との間で合意をめざすという点で、自主再建(私的整理・任意整理)と同様の性格を有します。

1. 自主再建(私的整理・任意整理)とは

2. 自主再建か法的手続か

3. 自主再建(私的整理・任意整理)の代表的な方法

4. 自主再建(私的整理・任意整理)の具体的な進め方

 
 
 
 
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